ラーメンに惚れて、
地元を愛す、
そんな店主の物語。
ラーメンに惚れて、
地元を愛す、
そんな店主の物語。
能登空港から珠洲までを結ぶ道をひたすら走り、緑豊かな能登町、天坂高速のバス停がすぐ隣にある『七味ラーメン』に到着。看板には大きく書かれた「いしりラーメンの店」の文字とイカのキャラクターが。そして、店名についてる七味というのはやはり「七味唐辛子」のことでしょうか? それでは、いざ店内へ!
店主の中田昭平(なかだしょうへい)さん69歳とお隣の美知子(みちこ)さん。ご夫婦で「ようこそ」と出迎えてくれました。
「そうなのよ。でもどちらの移転も、厨房の改装やリフォームを考えていた時期だったからタイミング的にも良かったの」
「店の名前も変えんと来たから、常連さんもついてきてくれたしな。ちなみに店名はわしの地元、能登町の七見からとって、見は飲食店だから、味に変えただけなんだわ(笑)」
あ! 七味唐辛子は関係なかったのか…。
次に気になる昭平さんが店を始めるきっかけについて聞いてみた。
普段は寡黙な昭平さん。後から聞いた話だが、美知子さん曰く、こんなにも話をする昭平さんは珍しいとのこと。
「わしが学生の頃に近くにあった食堂によく通ってたんだわ。頼むのは、ほとんどラーメン。そこからラーメン好きになったんやけどな。その頃、8番らーめんの一号店が加賀にできたやろ? そのとき食べたラーメンに衝撃を受けてな。19才の時に新聞に8番の従業員募集があったから応募して、働きに行ったんだわ」
「ラーメン好きから、今ではラーメン屋の店主ってことですね。いや、それにしても自分でラーメン作りたい! ってなったお父さんの行動力がすごいですよ! それも加賀まで行ったわけでしょ? ご両親もよくOKだしましたね」
「うちの親が工場で勤めててな…。まぁなんとか話つけて、加賀まで働きに行ったんよ。寮があったから、通う手間もなかったしな。働きながら、いつかはチェーン店としてでも自分の店持ちたいって思っとったし。でも地元のほうには結局来んかったから、自分で店出したんや」
「それで、看護師やめてお父さんとお店やることにしたんですか!? お父さんもやりますね~」
「わしが作ったオリジナルは、実はもう一つあってな。イカ味噌使ったやつなんだが、ついでだし作ってやろうか?」
「ぜひぜひ! お父さん考案のラーメンはいしりとイカ味噌の2種類があるんですね」
「そうやね。自分で店出したときは醤油・塩・味噌だったんやけど。それも当時の8番の味を参考にしてな。でも町会の人達が町おこしのために、この土地ならではのラーメン作れんかって来たわけよ。そんで、いろいろやってみて、いしりとイカ味噌つかったラーメン作ったわけ。まぁスープとの相性も良かったからな」
ちょうどいいからと見せてくれた、いしりが主役の特製調味料。芳醇な香りが漂います。
「これ、作り方お父さんしか知らないのよ。家族にも教えない、秘伝のタレね。時々、お父さん大丈夫かなって思うときあるけど、最近はこのタレ作ってる限りはこの人は健康なんだなって思うようになったわ(笑)」
「なるほど、食べる人にはおいしさの秘訣だし、お母さんにとっては安心のタレなんですね(笑)」
先ほども感じたのですが、目の前に運ばれるとスープの香りが鼻と腹を刺激してきます。シンプルな見た目なのに、手のかかった一杯。まずは、スープを一口。豚骨の風味に奥深い、いしりの味わいが広がってきます。
麺もすすらせてもらいます!
麺は細麺で少しちぢれた感じになっています。
「ん~そうやね。まぁわしも働きながら修業したって言ってもスープの材料を直接教えてもらったわけじゃないからな。ひたすら食べて、味を覚えていったんや。でも、なんとなく分かるもんやろ、四六時中ラーメンのこと考えてたら。それで自分なりに食べ続けた8番の味に近づけていったんや。味はそうやなぁ~あまり当時から変えてないなぁ」
次は「いかみそラーメン」680円。これまた手際よく、鍋をふるい野菜を炒め、特製のイカ味噌タレを使いあっという間に完成!
「作り方は教えられんけど、特製のイカ味噌タレは、すこし濃厚な味にしとるからな。スープとのバランス考えて」
「いしりもそうだけど、くせになったってまた来てる人もおられるわ」
あっという間に食べ終えて、その後は後継者の話に。
「41年間続いてきたお店は、後継者の方とかいらっしゃるんですか?」
「でも、秘伝のタレはお父さんしか作れないんですよね? 弟子になりたいって人はいなかったんですか?」
「宣伝する力もないしねぇ~。常連さんやまた来たよって人に支えられて何とかやってるわ。お父さんが一代で作ってきたお店だから、ほんとはずっと残していきたいんだけどね」
「タレやスープ、ラーメン作るのも最初は食材選びも大変だったの。お父さん、納得できる味作るためにいろんな食材使ってみて、あれもダメ、これもダメって。それでようやくできた味だから。お父さんが作る秘伝のタレは特にね。だから、あんまり教えてくれないのよ」
「じゃあ本気でお父さんのところに修業させてくださいって人が来たら、秘伝のタレも伝授するんですか?」
「そんな人がおったら、考えなくもないわな」
学生時代よく通った店で食べ続けたラーメン。その後、自分の人生を変えたラーメンとの出会いがあり、今の昭平さんがいる。地元に構えた店では、町の特産品を使ったラーメンをいち早く提供。多くのファンがいながら、その味を継ぐ者はいない。「鍋をふりつづけられるうちはな」と笑いながら話す昭平さんだったが、少しばかり悲しい表情も感じられた。
にじみ出るラーメンと地元愛が感じられる「七味らーめん」では、いつでも二人が温かく迎えてくる。能登へ行く際は、ぜひ立ち寄ってみてほしい。
No.10
七味らーめん
0768-76-2073
11:30~21:00
不定休
石川県鳳珠郡能登町字天坂54
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