豊かな自然の恵みと
人の温かさを大切にする、
能登のドライブイン。
豊かな自然の恵みと
人の温かさを大切にする、
能登のドライブイン。
松本清張の小説『ゼロの焦点』の舞台としても全国的に知られ、同名映画のロケ地として記念碑が立てられている能登金剛。その有名なスポット「巌門」が見下ろせる高台に、ポツンとドライブイン『ロードパーク女の浦』が佇んでいる。多くのドライバーやバイカーが訪れるこの場所に、能登の魅力を詰め込んだ一品がある。
「皆さんこんにちは。絶メシ調査隊の寺田です。やって来ました能登に! なんでも今回の店は能登のドライブイン。噂の能登ラーメンは能登の恵みが詰まったオリジナルラーメンとのことでテンションが上がっております!」
(取材:絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名:寺田尚人)
40年以上続くこの店。店内には、お土産が買える物販コーナーも。平成元年に一度立て直しを行い、店内のスペースを広げたのだとか。以前はお店の大きさも今の半分だったらしい。
今なお現役。持ち前の明るさでこの店を盛り上げている。
「なんと!(今じゃ看板メニューになっているラーメンが昔はあまり人気がなかったって…)ますます、気になるメニューですね! お母さん、早速、能登ラーメン一つお願いします」
「はいよ」と厨房に向かう岡本さん。
最近は、座りながら作業することもあるそう。「歳だね」と笑うが、熟練された手つきで調理を行う。店で扱う海鮮にも、強いこだわりがあり、知り合いの漁師さん達から海から上がったばかりの食材を仕入れているのだとか。
「そうよ。私、ラーメンなんて作ったことなかったからね。元々は、14年前に亡くなった主人がお店をやりたいって言っていてね。主人の友人がやっていたドライブイン食堂をそのまま譲ってもらったの。料理全般は私に任されたんだけど、飲食の経験なんかなかったから、大変だったわよ」
「たまたま知り合いに料理人さんがいたから、訪ねてね。わずかな期間だけど、主に料理の基礎、出汁の使い方とか習わせてもらったのよ」
「出汁ってことはうどん? うどんがメニューの中心でだったんですか?」
大量のワカメとカニ、煮つけのイカがトッピングされ、磯の香りがたまらない一品。麺は中太麺を使用している。
早速、岡本さんが特に苦労したというスープから頂きます。
醤油スープに海鮮の塩気が溶け合い、互いを尊重しあう味わいで「あれ今、鮮魚を食べている?」と思わず考えるほど。味のベースにカツオやコンブなどを使い和風に仕上げ、隠し味にオリーブオイルを加えているのが特徴。
「提供を再開したのはなんでなんですか?」
「おぉ。ラーメンは進化して復活を果たしたわけですね!」
「そうなのよ。勉強のために他のお店さんに食べにいってね。味だけじゃなくて、どんな感じで作っているのか観察するようにして、少しずつ改良していったのよ。ほかのメニューも同様にね」
「これがメニュー」とこれまた年季の入ったものが出てきました。
オープン当時は、注力したうどんや丼ぶり、定食など食堂らしいメニューを揃えていたと言います。「能登うどん」(600円)も実は今も隠れた人気メニュー。
「定食系は種類も減らしちゃったけどね。以前は朝飯なんかもやっていたのよ」
「そうね~。仕事に行く前の朝ごはんをウチでって人も多かったから。ごはん、味噌汁、刺身やサザエのつぼ焼き、魚の煮つけなんかをセットにして出してたのよ」
「コンビニできて、今はもうやめてしまったけどね。私は2回ほどしか利用したことないけど、コンビニ便利だからねぇ~」
「是非ともお願い致します」
仕入れによって入る具材が変わる海鮮丼1,700円。
エビやタコ、サザエなどは生きたまま仕入れているのだとか。
能登の魚介が詰まった一品が到着。米も地元のコシヒカリを使っているとのこと。
ボリュームもあり、6種類ほどの海の幸がのっている。では、いただきます!
大きな甘エビ。一口で新鮮さが分かります。
「甘! プリっとした身の中に、旨味が凝縮してますね。マグロやサケも新鮮」
「入っているタコは水ダコなんですよ。これも生きたまま仕入れるから、逃げ出す時もあるのよ。醤油も能登のもので甘めの醤油になってるんです」
「その海鮮の一部は、お店を手伝ってもらっている方の旦那さんが取ってきてくれているのよ。毎日、親切にしてもらって、助けてもらってばかりだからね~。いくら感謝してもたりんわ」
「親切な方なんですね。お母さんは今、そのお手伝いさんと二人で店に立っているんですか?」
「そうよ。最初は無償でお店手伝ってくれていたのよ。そんな人、ほかにはおらんからね」
いい人に出会え、一層この土地の恵みに感謝する機会が増えた。
それが、今でも厨房に入る活力になっている。
野菜も自家栽培。ワカメや魚も自身で干していると言います。できることはなんでもやる。けれど、出来ることを当たり前に思わない。「なんでも、大切にしないといけないからね」と笑う岡本さんに店の成り立ちを聞いてみた。
「そもそも、お店をやろうってなったきっかけはどんなところにあったんですか? 自分も飲食の経験がないので、いざ店を譲ってもらえるってなっても、躊躇するなぁ~と思って」
「適材適所ですかね?(笑)」
飲食スペースの反対側には、
お土産が買える物販コーナーもあり、
能登の名産がズラリと並ぶ。
観光名所がすぐ目の前にあるドライブイン食堂。道の開発に伴い、街道筋のドライブインに立ち寄る人は減っている。ここ『ロードパーク女の浦』もその一つだ。それでも、この地に魅了された岡本さん。胸に秘める思いで店を守り続けている。
「昔は皆さん海沿いの道を通っていたからね…。次第に、のと里山海道が便利になっていって、遠回りする必要もなく、能登に来れるようになったからね。ドライブインとしての需要も徐々に弱くなっていったのよ。コンビニと同じように便利になれば、これまで当たり前だったものも減っていく。それも時代の流れなんだけどね」
「それでも、お母さんは長いことお店の場所も変えずにやってきたのには、何か理由があるんですか?」
「主人と共にやってきた店だから、思い入れがあるのかね。お店に来てくれるお客さんや、今お世話になってるお手伝いさんがいるから店を続けているんだろうね。いつまで続けられるか分からないけど、支えてくれる人のために頑張っていますよ」
「そう?(笑)夏は、アイスクリームもあるし。私の好きなサイフォンで入れたコーヒーもあるから、また今度いらっしゃい」
「また来ます!」
お店を手伝っている方から後から聞いた話。旦那さんが亡くなり、元気をなくした岡本さんを見て、なんとか元気になってほしいと常連だったその方が店を手伝うようになったという。岡本さんの元気な姿を見たい、丹精込めて作る料理を食べたい。そんな人たちがいると話してくれた。様々な困難を乗り越えてきたからできる笑顔で「いつまで続けられるか分からないけど、支えてくれる人のために」と話す岡本さん。その温かい人柄に多くの人が集うのだろう。また、そんな人々を虜にする料理がここにある。
No.15
ロードパーク女の浦
0767-48-1514
9:00~18:00
2/1~3月初旬は休業
石川県羽咋郡志賀町福浦港19-55-1
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