集大成の味寿司龍

No.04

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上荒屋で53年。

ワイルドな大将が握る絶妙なお寿司は

破天荒に食べ歩いた集大成の味!

金沢市郊外、上荒屋の住宅街にたたずむ風情ある外観の「寿司龍」。その店構えとは一見するとミスマッチに見えるローマ字の看板がとてもオシャレ!今回はお寿司屋さんです!しかも回らないお寿司。ライターの三大好物に入るお寿司が絶メシと聞いたなら、これは調査しない手はありません!鼻息荒くお邪魔いたしますっ!

(取材:絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名:美緑トモハル)

遊びながら、楽しみながらが伝わる人柄
年代を超えて深まる繋がり

清潔感のある店内。温かみのあるオレンジ色の照明が落ち着いた雰囲気を醸し出している。

カウンター奥には大きな木彫りのお面がどどーんっ!存在感!!

ここ寿司龍は、大将の勝村さんが継いで二代目となるお寿司屋さん。場所を金沢の寺町から上荒屋に変えて53年。長く続いているお店の歴史を伺いました。

ライター美緑

「昔ながらのお店で素敵です!ここはちょっと金沢の中心から離れてる場所じゃないですか?やはり地元のお客さんが多いんですよね?」

勝村さん

「それが、ここらへんよりは金沢から来られる人の方が多いね。どちらかと言うと金沢の街の人を昔から呼び込んでたから。地元のお客さんは少ないかもね。」

ライター美緑

「SNSなんてなかった時代に、どうやって金沢の街のお客さんにアピールを?」

勝村さん

「それは、金沢の夜の街へ出てやね。いろんな店に通って、親しくなって、そこから」

ライター美緑

「足しげく通って、繋がりを作っていたわけですねー。」

勝村さん

「そうすると、タクシー飛ばして来てくれたりしとったね。景気のいい時代やったから。」

ライター美緑

「最近も、金沢へは遊びに行ったり?」

勝村さん

「たまにやけどね。30年も前から金沢美大の子達が夜バイトに来てくれるんです。そういう関係の子たちと遊びに行くから。」

ライター美緑

「若い!美大生と、どういうところに行くんですか?」

勝村さん

「美大の卒業生とかがたまり場になっとるお店とか。おもしろいよ」

そういえばお店にはさりげなく飾られているアートな品々が。

クリスタルで出来たお雛様や、両手をあげて叫んでいるような彫刻。どれも卒業生の作品で、中には有名作家になって高値がついている作品もあるそう・・・。

時代背景が見え隠れ
驚愕の武勇伝

50年続くこの仕事のやりがいやモチベーションを聞いてみた答えがなんと

『儲かるか儲からないか!(笑)』

20年程前はかなり稼いでいたと、武勇伝を聞かせてくれました。

ひとつ!お寿司の配達は高級スポーツカーで!

ひとつ!飛行機の免許をとって日本全国食べ歩き!!

 

はい??飛行機???

友人と数人で飛行機を所持していたそうです。豪快過ぎます!

ライター美緑

「記憶に残っている美味しかったお店ってありますか?」

勝村さん

「そうね。利益よりもお客さんにうまいもの食わせたいっていう心意気がある店ね。でもそういう店って、儲からん。うちも一緒やけど(笑)うちの店に来てくれたお客さん、特に若い子には金沢港で仕入れて来た、のどぐろでも何でも、本物の味を今のうちに教えておきたいっていう気持ちはあるよ。」

ライター美緑

「美味しいものを食べて、舌が肥えるって経験にもなりますもんね。」

勝村さん

「でも今はみんな携帯で美味しい評判のあるお店だけを探していくやろ?本当は、身銭切って、失敗も重ねて、いろんな経験をして自分の足で美味しいと思うお店探しを若い子にもしてほしいなーって思うわ。

美味しさの感覚
職人という定義にとらわれず

勝村さんの話を聞いていると、「お金」という儲かりたいキーワードよりも、「美味しい」という幸せキーワードが強く伝わってくるなと感じたわたくし。

そこはやはり、職人としてのモチベーションなのだろう!と分かったような口を聞いてみた。

勝村さん

「なーん。私、職人ではないげんて」

・・・はい。お門違いも甚だしいぞ、ミロクッ!!

勝村さん

「職人さんって、親方の下でちゃんと修行をしてそのお店の味を受け継いでいくやろ?割烹屋さんなんかでも大体どこで修行したか分かるもん。味の系統が一緒やから。私は、親方がいない分、いろんなところで食べ歩いてきたから、同じ味の系統がないんや。あと、職人さんの握るお寿司は、きれいに形が整っていて見た目が大事やったりするけど、わしの寿司は2,3回サッと握って終わり。形も大事なんやけど、あまり握りすぎると固くなると思って。」

ライター美緑

「口の中での酢飯のほどけ具合ですか?」

勝村さん

「そう。バイトの子らは褒めてくれる。うちの寿司が美味しいって。お世辞かもわからんけど(笑)でも、美味しいって感じるのって、味もあるけど、たぶんその店の親父とかおかみさんの人柄かな。どんなに美味しいもの出されても、つっけんどんに出されたら絶対美味しくない。わしの寿司なんて今でもひっくり返るもん。嫌になるわ~(笑)」

ライター美緑

「(笑)でも確かに緊張感の中で食べるご飯ほど、味のしないものは無いですもんね・・・。勝村さんは、親方がいない中で、この寿司龍の味をご自身の感覚で作り上げて来たわけですよね?この、“自分の味”を引き継いで欲しいなと言う気持ちはないのでしょうか?」

勝村さん

「(少し考えて)ないな。自分の好き勝手やってきて、今から育てようというのは、出来んね。まず育てられん。だって、自分の息子ですらそんな気持ちにならんがやし。
でも今となっては楽や。わしの代でしまえばいいんやもん。」

サッと握ってコロンと転がる
心もほぐれる寿司龍のお寿司と
昔ながらのカウンター

寿司龍のカウンターには昔ながらの機能がある。

ジャーン!!

水が出るんです!お寿司を食べた後に指をすすぐことが出来る優れもの。

接待などで訪れるお客さんは、このお水を話のタネにすることが多いらしい。

と、言う事で!!勝村さんにお任せして、お寿司を握ってもらいました!!

 

水が流れ始め、カウンターに大きな生の葉っぱが置かれる。

これだけで風情が!わくわくが止まらないです!カウンターでお寿司を食べられる人間になったのだなぁと夢見ていると、勝村さんがトンっとお寿司を出してくれました。

・・・早い。

そして、つやつや。これが噂の転がるお寿司!

酢飯は小ぶりでふわっと握られていて、口に運ぶとほろっと崩れて食べやすい。

ちょっと甘みが感じられる酢飯に、昆布でしめられた鯛が合う!

もっと味わっていたいのに、すぐいなくなっちゃうんだもん・・・。

食べた後は、水で手を洗います!なんか、粋っ!!

そして、食べた記憶がとどまらない程のスピードで、残りのお寿司も完食。美味・・・。

ライター美緑

「ごちそうさまでした!美味しかったです!また来ます!」

勝村さん

「そん時は、安くしてあげるね」

この10年間、朝に仕込みを終わらせて、お昼の営業前に毎日10キロ同じコースを走っている勝村さん。仲間と一緒に山に登るための体力づくりだと嬉しそうに教えてくれました。「(体が健康だから)いつ死んだらいいか分からんわー」とおっしゃっていましたが、走って走って登って登って、どんどん体力付けて、長くながーく、寿司龍で楽しい武勇伝を聞かせてもらいたいです!!

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