いつしかサンドイッチ専門になったニュージョイスかもの

No.11

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

89歳のお母さんが厨房に立つ、

家族で営むサンドイッチ屋は、

昔懐かしい家庭的な味だった。

金沢工業大学のすぐ近く。20種類以上の手作りサンドイッチ目当てに、朝から学生や通勤前のサラリーマンなどが次々と店に足を運ぶ「ニュージョイスかもの」。昭和51年創業のこの店、現在でも90歳手前のお母さんが厨房に立ちボリュームのあるサンドイッチを手作りしているのだとか。

ライター寺田

「どうも、絶メシ調査員の寺田です。今回お邪魔するお店は、家庭的な味わいで人気があるサンドイッチ屋とのことで、早速行ってみましょう!」

店内に入ると…
「いらっしゃいませ~お客様よ~」と厨房から声が…

ライター寺田

「すみません。自分は本日絶メシの…」

「いらっしゃい」と2代目店主の加茂野勉(かものつとむ)さん62歳と店を立ち上げた89歳の加茂野淑子(かものよしこ)さんが厨房から出てきてくれました。

挨拶をしている間にも次々とお客さんが!

ライター寺田

「すみません。お忙しい時間に、今日はよろしくお願い致します。朝は大忙しですね(汗)」

勉さん
「やっぱり朝が一番忙しいね。ありがたいことに、学生さんや通勤前のお客さんが立ち寄ってくれるからね」
ライター寺田

「皆さん目的は、ケースにズラッと並ぶ手作りサンドイッチですよね。それにしても、一つひとつのボリュームがすごいですね」

具材がパンパンに詰まったサンドイッチ!

20種類以上のサンドイッチは170円から提供。勉さんは深夜3時半から、混雑が予想される日には深夜2時から仕込みを行っているという。

淑子さん

鮮度とボリュームはオープン当初からこだわっています。店を始める前は、この辺りに何もなかったからね。自分にも何かできないかなって考えたんですよ。子供たちも大学に行かせてやりたかったからね」

 

ライター寺田

「それでお店オープンさせたんですか? ところで、当初からサンドイッチ専門だったんですか?」

淑子さん

最初は、サンドイッチのほかにお弁当とかも作ってたんですよ。あまりにもサンドイッチが売れるものだから、他のものに手が回らなくってね。いつの間にかサンドイッチだけになりました(笑)

勉さん

「昔はお菓子やタバコも売ってたんですよ。コンビニみたいに」

ライター寺田

「へぇ~。じゃあオープン当初から近隣の人から重宝されてたんですね

勉さん

「ほんとに何もなかったからね。自分たちも本当にお袋と亡くなった親父に感謝ですね。自分を含め4人も大学に通わせてくれたわけですから」

ライター寺田
「すごいですね。今でも朝早くからお店に出て、絶えず調理されてるわけですから。これに昔はお弁当もあったんなら、相当忙しいし、大変だったんじゃないですか?」
淑子さん
「私は3歳からお菓子屋で働いておりましたから」
ライター寺田
「(ん?)3歳から? ど、どういうことでしょうか?」
淑子さん
「戦時中、私の両親が植民地だった朝鮮半島に渡ってね。私は今の北朝鮮で生まれ育って、お菓子やタバコなんかを売っていたお店の手伝いをしていたの。次第に仕事はもちろん、人と接するのが好きになっていったのよ。その後、昭和21年の引き上げで日本に戻ってきてから主人と出会いましてね。それで、自分がこれまでやってきた経験を生かしてお店を出したの。たくさんの人が来てくれるようになった今では、支えてくれた周りの人や子供たちに毎日感謝しています」
ライター寺田
「いろんな体験をされてきたんですね。(…す、すごい歴史だな)」

「商品も少なってきたので」とサンドイッチ作りを再開

作っては補充してを繰り返す。日に150~200食、多い時には400~500食近く売れるため、昼すぎには品薄や完売することも。

サンドイッチは毎朝調理。自前のフライヤーでカラリと揚げた極厚のとんかつサンドや果物がゴロッと入ったフルーツサンドなど次々に作っていく。

自慢の「たまごサンド」に使用する羽咋産の新鮮な卵は毎日100個ほど茹で、多い時では180個も使っているという。からし入りのマヨネーズを使いコクと卵の旨味を立たせるのがポイントだ。

そしてなんと!
サンドイッチ購入者には、
パン耳をサービスしているのだとか!

後ろのほうのパンはまだ使えそうですが「食感を重視したい」という店のこだわりを感じます。

ライター寺田

一つひとつがさすがのボリュームですね。これだけ具材を盛り込んでても、手に取りやすい価格だからいいですね。

勉さん

「価格はしょうがなく変えてしまうところはあるけどね。味は変えず、親しみやすいようにしてますね。食材もこだわってね。お袋は東京の親戚のところまで料理を習いに行ってたんですよ」

淑子さん

「子供のためよ。おかげさまで孫にも恵まれてね」

ライター寺田
「じゃあ、次はそのお孫さんが店を継がれるんですか?」
勉さん
「いやーそりゃー分からんなぁ。俺は東京でサラリーマンしてて身体壊してしまったから、28歳の時に戻ってきて店手伝うようになったけど…。まぁ今でもこの店はお袋の店だと思ってるしな

「そんなことないわ、パートさんにも助けられながら、私はもう息子のお手伝いですよ」と淑子さん。

そんな思いの詰まったサンドイッチを 、
早速自分も物色!

ライター寺田
「いろいろあって悩んでしまいますね。やっぱりカツ系は欲しい! もちろん玉子サンドも選びますよ~」

「カツだったら。今作ってあげるよ~」と厨房の淑子さん。

慣れた手つきであっという間に「とんかつサンド」300円(税別)を作ってくれました。

作りたてのカツサンド。ボリュームも大!

ライター寺田

「見てください、カツが分厚い! 包装から取り出す際にもパンのしっとりとした食感と具材の重量をしっかりと感じられます。薄めに切られたパンにはさまるトンカツは、ジュワっと肉汁が広がってソースの濃厚さにマッチします。バランスの取れた見事な味わい!」

じゃあ次は「たまごサンド」170円(税別)行ってみますか!

ライター寺田

「もうね、パンパンなんですよ玉子が! ゴロゴロっと、というより隙間なくギッシリと詰まった感じ。素材を生かした味わいですね、玉子の旨味がしっかり感じられる。これは先ほどお母さんが言っていたからし入りのマヨネーズが効いているんでしょう。からしの風味はさほどなく、濃厚な玉子の味わいが優しいパンに包まれてお腹を満たしてくれます」

いや~美味しかった。

「近所の人に利用してもらいたいと始めた店が、今ではいろんな人に助けられている」。店を続けられていることに日々感謝をしていると淑子さん。この感謝の思いがサンドイッチをまた一段と美味しくしている隠し味なのかもしれません。

 

「オープン当初から変わらず、食材は鮮度にこだわり、サンドイッチは作りたて、そのためなら手間暇惜しまず、なおかつリーズナブルな価格で提供できているのは、商売が好きで人が好きで前向きなお袋(淑子さん)あってこそ」と店を支える勉さんやパートさんは言います。「もう7、8年は大丈夫かな~。100歳まで続けるかなぁ~」と満面の笑みで調理をする淑子さん。そんな姿を見て、サンドイッチだけじゃなく、元気な淑子さんから一日のパワーをもらいに足を運ぶ人もきっといるのだろうとつくづく思う店だった。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加