店をたたむも惜しまれた、
中華料理店の餃子を、
自宅で再度提供する。
店をたたむも惜しまれた、
中華料理店の餃子を、
自宅で再度提供する。
能美市緑が丘の閑静な住宅街に、餃子専門店『福華』がある。見た目は普通の一軒家。特徴があるとすれば、ギョーザと書かれたのぼりが2本でているだけ。なんでもこの店、40年間以上続けた中華料理を一度はたたむも、訪れていた客から「餃子だけでも作ってほしい」と強い要望を受け2013年、餃子だけをテイクアウトできる店をオープンさせたという。
(取材:絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名:寺田尚人)
「こんにちは。絶メシ調査員の寺田です。この店、あまりにもこの住宅街にとけこんでおり、どこにお店があるのか分からない…。何を隠そう自分も、店が分からず迷いながらなんとか辿り着きました。目印はのぼりだけ! 提供するのも餃子だけ! そんな店で、お客さんの要望から復活した餃子…。いったいどんな魅力があるんでしょう? 道に迷ってお腹も空いているので、さっそく行ってみましょう!」
とはいえ、完全にご自宅…。
一体どこから入れば、そもそも家に入るのか?
などと考えていると、道路に面している窓が開き、店主の佐々木俊明(ささきとしあき)さん73歳が声をかけてくれました。この窓が、餃子の受け渡し口になっているらしく、スタンドメモには、しっかりと営業中の文字が!
「こ、こんにちは(ビックリした~)。自分、絶メシ調査員の寺田です。本日はよろしくお願いします」
「(あぁそういえばテイクアウトの店だった…)。すみません。お言葉に甘えておじゃまさせていただきます」
と、いうわけで佐々木さんのご自宅に上がらせてもらい、話を聞くことに。
「へぇ~。失礼ですが、前のお店はどこでやられていたんですか?」
「それで、今のように餃子だけのテイクアウト専門店になったんですね。それにしても、飲食の経験なしで、どうしてお店やろうって思ったんですか?」
「元々、飲食の世界に興味があったからな~。最初は和食の店をやりたかったんや。たまたま兄が中華やっとっから、基礎を学んでな。それから自分でも大阪に修業行ったんわ。それで昭和52年、30歳の時かな山代で店をオープンしたんや」
オープン当時は、餃子はもちろん、ラーメンやレバニラ、麻婆豆腐など様々なメニューを揃えていたという。「山代温泉も近かったから、夜間が特に盛り上がっていたなぁ~」と昔を懐かしむ佐々木さん。
「地元の人も来てくれたけど、観光で来られる人も多かった。仲居さんと来られ人や仕事で全国回っとるような人もおってな~。そんな人はみんな舌肥えとるし、寿司とか高い店なんかに行くんや。でも、ありがたいことにそんなお客さんが別のお客さん連れてウチにもよう来てくれたわ」
「山代で構えた店も評判だったんですね。そのころから、餃子は人気だったんですか?」
そして、何かを思い出した佐々木さん。
見せてくれたのは前の店で作ったマッチ。
「だいぶ残ってるわ」と佐々木さんから見せてもらったマッチは、店をたたむちょっと前に作ったという。これを作っていたということは、本当はもっと店を続けたかったんだろうなぁ~と考えてしまいました。
「おぉ!(展開が急ですが、腹ペコな自分にとってはありがたい!) 是非是非お願いします」
佐々木さんは餃子を焼くため先ほどの販売スペースへ。
こちらで仕込みもやっているのだそうです。
「ここで餃子も焼くんですね。というか、佐々木さん一人入ったら、もういっぱいいっぱいのスペースですね」
辰口でお店をやっていたころ、肉もご自身でさばいていたのだとか。現在は国産の豚バラ肉を仕入れ、餃子専用の調理機材を使って餡を作っている。ミンチに合わせるハクサイやニラ、ニンニクは地元野菜も使っており、むろん国産にこだわっている!
メモの通り、油をひき冷凍を凍ったまま並べて焼き上げ開始!
きつね色になった餃子は、醤油と酢を一対一で混ぜられた自家製タレにつけていただきます。テイクアウトの際にも、この自家製タレが貰えます。
では! 出来立て餃子を早速いただきます!
ん?
んん? うまっ! 薄めの生地ですが、モチッとした食感がしっかりとあります。餡の量も多く、生地の中から肉の旨味とハクサイの甘味が溢れんばかりの肉汁と共に口に流れ込んできます。餡のジューシーさに野菜のシャキシャキとした食感がたまりません! この自家製タレの酸味も餃子全体の味を引き締める、いい仕事をしています。そして気が付けば、一人前(6個)をペロリと完食。
「よかったわ。わしの自慢の餃子で喜んでもらえて」
夢見た飲食の道。その夢を叶えて構えた店を、一度はたたむもその味が忘れられない人々の思いから再度奮起した。身体を壊しながらも「餃子を求める人がいるかぎり作り続けたい」と語る佐々木さんが、出来る精一杯の範囲で形にした『ギョウザの福華』がここにある。大きめの餃子には、佐々木さんのこだわりがビッシリと詰まっている。最後に持ち帰りで冷凍餃子を購入すると「上手く焼けなかったら電話して(笑)」と冗談を交える佐々木さんから、この人は本当に料理と人の笑顔が好きなんだなと感じました。また餃子買いに来ますよ!
No.14
ギョウザの福華(ふくはな)
石川県能美市緑が丘8-94
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