加賀にそびえたつ40年変わらない看板の下
100円でうどんが食べられるお店が!?
ここはきっとパラダイス。
加賀にそびえたつ40年変わらない看板の下
100円でうどんが食べられるお店が!?
ここはきっとパラダイス。
石川県加賀市。見たことはあるけど、入ったことはないという人も多い!?噂のお店、その名も「びっくりうどん」が今回のターゲットだ。かくいう、私もそのうちのひとりであった。これは期待が高まります!!いざっ!絶メシに会いに!
※価格は取材時のものになります。
(取材:絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名:美緑トモハル)
そうそう、この外観。こんなに近くまで来たのは初です。
「よろしくお願いします。今日は、いつもにないくらい暇なんです(笑)」
「そうねー(笑)」
「これは、明日の仕込みですか?」
「そう。カレーとね、こっちはお揚げさん。」
となりではボールいっぱいのネギを刻む娘さんが。週に2度ほど手伝いに来ているのだとか。カウンターには揚げたての海老天・・・美味しそう。
「私、実は父の実家が加賀市なので、小さい頃によくこのお店の前を通っていて、ず〜っと気にはなっていたんですよ。」
「昔からこんな感じだし知らない人が見たらやっているかどうかも分からないよね。客観的に、第三者が見たら(笑)」
「外観、本当に変わってないですよね!」
「そこら辺はほら。無駄なお金は使わない。材料をケチったりはしないけど、外側は、うん。お金はかけない。雨漏りさえしなければ。」
「お母さんは何年このお店をやっているんですか?」
「もう41年目やね~」
「今年で!すごい・・・どうしてうどん屋さんをやろうと思ったんですか?」
「うちの亡くなった主人が勤めてた酒屋のおかあさんにやらないか?って言われて。それまで子供たちを育てていたから、主婦だったんだけど、突然うどん屋になったの。」
「なんの経験もなく!?その時は「やる」って二つ返事だったんですか?」
「(笑)無謀だね」
「すごすぎる・・・(笑)」
「どうであれね、自分で選んだ人生じゃないの。」
「だけど、やるかやらないかはちゃんと選んできたってことですよね。」
このお店をやらないかと誘われ決断したのは2度目の時だった。最初に誘われたときには子供たちもまだ小さく頼れる人が周りにいなかったことから断念した経緯があったという。橋階さんの旦那さんが亡くなった後も、酒屋のおかあさんに公私共にお世話になり、今でも付き合いをして頂いていると話してくれた。
「だけどね、40年経ってもここでうどん屋をしているとは考えてもみなかった(笑)」
「40年以上続くってすごいことですよね。」
「やっぱり、体が丈夫で元気だったからかな。病気してないから。」
「大病もせず。それは気力からなんですかね?毎日お店をやらなきゃっていう。」
「いやぁ、もともと体は丈夫だったの。あとは、ちゃんと仕事して、ちゃんと食べて寝て、少し楽しみをして笑って過ごすってことが体にも大事だと思ってる。どんな人でもね。」
「笑うことが体にもいいんですね~。あ、お店の名物の素うどん(びっくりうどん)が41年ずーっと変わらずに100円とお伺いしたんですけど、その名の通りびっくりしています・・・。仕入れの値段は変わっていると思うんですが、どうやりくりしてるんですか?!」
「食材のね、質は落とさずにできるだけ安く仕入れられるところを探してお願いしてる。値段は上げたくないし、質も下げたくないから、そういう努力はね。ネギなんかでも、時期によるけどご近所で地元のものを安く売ってくれる方がいて。」
「助かりますね!昔からの知り合いの方?」
「そう。お客様なの(笑)その方も市場に出してるけど、採算度外しでうちには安く持ってきてくれて。長く続けて欲しいからって。ありがたいよね。」
「その気持ちが嬉しいですね・・・あの大きな巻き寿司も100円なんですよね?うどんと食べても200円・・・。」
「そう。だから、年配の方なんかは、一人暮らしの方のお家に行く時お土産に持っていったりするのよ。お菓子よりも、巻き寿司だったらご飯作らなくていいから喜ばれるって。」
「助かりますよね。コンビニだと250円くらいはすると思うほどの大きさです(笑)このお店はそのほとんどが手作りなんだとか?」
かんぴょうやお揚げは、昔ながらのザラメで炊く。その出来は、艶とコクが出て、市販のものとは風味がまったく違うという。うどんのトッピングで手を掛けてないのは卵ととろろ昆布だけ。肉もカレーも海老天も揚げもすべて手作り。こうやって手を掛けても、かんぴょう巻は1日で3本ほどしか出ないと笑う。それでも、自分で作ることによって、割安にはなるし、業者さんには1人で手間暇かけてそこまでするお店はないと言われるが、これでずっとやってきて、この味にお客さんが付いてきてくれているのが分かるから今更変えられないと。
このお店には40年間ほぼ毎日通い続けている常連さんがいる。ひとりの人生が垣間見れ、それは橋階さんにとっても自分の人生を明け渡している事にもなる。だけどお互いに40年、元気に顔を見ることが出来て嬉しい事だと教えてくれた。
「明日からもまたそれが続いていくんですね・・・素敵な話・・・」
「常連さんにとっては、うどんだったからそれだけ続いたんだと思う。日本がお出汁の文化だったから。」
「確かにそうかも知れないですね。お客さんは常連さんが多いですか?」
「あらかたね。だからその人の健康状態だったりね、家庭の中がいろんな状況で変わったりなんかは見える(笑)」
「本当、みんなのお母さんですね(笑)」
「(笑)基本的にそう言う面ではお節介なんだと思う」
取材中もひっきりなしにお客さんが来店されていて、そのひとりひとりに声をかける橋階さん。帰るときには「いってらっしゃい!」夜勤明けだと分かってる常連さんには「おかえりなさい」「歯を磨いて寝るんだよ」なんて、まるで実家の母親のようなあたたかさだ。目を見て、言葉を交わすコミュニケーションを大切にしているのが分かる。
「お客さんも私も、持ちつ持たれつ、お互い様だと思ってる。一方通行はないって。」
「お母さんにとってのやりがいは、お客さんとの心のコミュニケーションですか?」
「ここまできたら多分そうだと思う。子供たちも大人になって親としての勤めは果たしたわけだし。近江商人の、三方良しって知ってる?自分良し(商売)、相手良し(取引先とお客様)、世間良しって。そうやって、世の中が回るようにしたいの。二方向じゃ回るって言わないじゃない?」
「往復ですね。そんなことを思いながら毎日お店をやられてるんですね。」
「人ってね、あったかいもの食べると、なんか違うじゃない。よく寒い日なんかで丼出したりするとね、みんな両手で持って「あー母ちゃん。ぬくい(あったかい)」って(笑)うちは器も重たいけど全部陶器で出してるのは、温度が伝わるから。あと、熱いから気をつけてねって、声も掛けやすいし。」
「一言添えられる!」
「そう。なるべく、言葉を添えてあげたいの。」
なんだろう・・・お母さんと話していると、とても落ち着く・・・
GUUUUUU。
ハッ!!!落ち着きすぎて、お腹が鳴りました。。
「お母さん。お話の途中なんですが・・・私、お腹が空いてきました。」
「何にする?」
「カレー天ぷらうどん頂きたいです~~~」
「食べて食べて!!今作るね。」
「あと、このお稲荷さんとたまごのお寿司も頂いちゃいますね!そういえば、メニュー沢山あるんですね~」
「ないのよ。乗せる具材が、お肉と、カレーとえびの天ぷらと揚げと卵ととろろと。6種類しかないのを、ただ組み合わせてるだけなの(笑)」
「なるほど。メニュー表がたくさんあって、見た目いろんなうどんがあるように思いました。その組み合わせでここまで広がるんですね〜」
優しい心遣いだ・・・そうこうしていると、あっという間にカレー天ぷらうどんの到着。提供までの時間が早い!!
うわーーーー!!いい香り~(よだれが)
では早速ですが、頂いちゃいますねっ
おおおおお。
うどん屋のカレーって本当に美味しいんだよなー・・・こちらのカレーは玉ねぎの甘みもあって、お肉のつぶつぶも感じられる。
海老天、うんまっ♪カレーうどんに全然負けてない!風味が最高なんですけど~ずずずずずずっと、いつもは飲み干さないスープを平らげました。
「お母さん、天才っ。」
ザラメで炊かれた稲荷ずしと、ほんのり甘くてやさしい卵焼きは家庭の味。確かに濃い味ではないけれど、とても後引く味で何個でも食べられそう。。。ごちそうさまです!!
「美味しかった!!」
「よかった(笑)」
「このザラメ使ったり手作りだったりここでしか食べられない味をどうにか残していきたい、絶やしたくないって思いは?」
「そうね・・・もったいないと思う。」
「娘さんが手伝いに来てくれてますけど、後を継ぐみたいなことは?」
「娘は、矢面に立つっていう性分でもなくて、なかなか難しいみたい。でもそれはそれでいいと思ってる。うちのうどんは私のおしゃべり付きみたいなところもあるから。たいそうな事をしてるわけじゃないんだけど、うちに来てあったかいうどん食べて、ほんの少しでも顔が上に向いてくれたらそれでいいと思ってる。背筋が伸びたら、見える景色が違うんだよね。そのお手伝いをほんの少しでもできたらいいなって思いながらしてきたの。うどんの作り方なんかは教えられるんだけど・・・うどんだけ出せばいいって問題でもないから。難しいかなって。」
「心意気とか、お母さんの想い、このお店をやる意味みたいなものを丸ごと継いでほしいってことですよね・・・」
毎日お店を開いていると、訪れる常連さんの中には病院帰りの方がいたり。そんな時には「良かったね!」と声を掛ける。「入院せず、お腹が空いて、メニューを見て、自分の好きなものを温かいまま食べられるじゃない!」と。そう言うあたりまえの事が出来る幸せを伝えてあげたいんだと言う橋階さんの言葉には愛が溢れている。
「昔からそんな考えなんですか?」
「・・・いや、そんなことはなかったと思います(笑)元々の性分はそうだったと思うんだけど、お客様に育てていただいた部分もあるし、年齢を重ねて育った部分もあるし。だけど、どれだけ時間がかかろうとも育ったんならそれでいいの。たった階段1段でも登ったんならいいの。ゆるゆるでいいの、その人その人でね、かまわないのよ。」
「いい話ばかりで心が温かくなりました。」
「幸せハードル」を大切にしている橋階さん。それは、人と比べる人生ではなく、低めでいい、自分が小さな幸せを感じられる設定をすることが嬉しさの元を見つけられるコツなのだと。今年で73歳。その温かい心遣いはうどんと同じぬくもりが、これでもかと伝わってくる。これからもますます元気に!たくさんのお客様の心に、お腹に、温かさを提供してほしいです!ありがとうございました!
No.27
びっくりうどん(びっくりうどん)
0761-75-3134
9:00~16:00
毎週火曜日
石川県加賀市冨塚チ94-2
加賀温泉駅 車で2分 徒歩13分
絶メシ店をご利用の皆さまへ
絶メシ店によっては、日によって営業時間が前後したり、定休日以外もお休みしたりすることもございます。
そんな時でも温かく見守っていただき、また別の機会に足をお運びいただけますと幸いです。