「お話上手」なご夫婦が営む、
学生に愛されてきたお店とは?!
いざ潜入!
「お話上手」なご夫婦が営む、
学生に愛されてきたお店とは?!
いざ潜入!
雨が降る、秋。道路に打ち付ける雨音を聞きながら向かった先は石引にある金沢大学付属病院のすぐ近く。昔から学生に人気だと噂のお店『石橋屋』さん!!話し上手なお母さんがいるって事で、これはもう、行くっきゃない!!ですよね!?どんなお話が聞けるのか、わくわく、グゥグゥとお腹を鳴らして行ってきましたーっ
( 取材: 絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名: 美緑トモハル)
「こんにちわー!」
「あんたら誰や?何しに来たん?」
「あ、今日は、取材で・・・」
「ん?どちら様でしたっけ??」
・・・キタキタキターー!!
はい、絶メシ調査隊、早速洗礼を受けております。文章に起こすとぶっきらぼうで冷たい雰囲気が漂うこの文字の羅列。
が、しかーーし
現場の雰囲気は、この弘美さんの言葉でドッカンドッカンと笑いが起こるのです・・・なーぜー!?それは、この後のインタビューの中でどんどんと分かっていくことでしょう…ニヤリ。
「すみません、忙しい時間に。」
石橋屋は朝8時から営業している。
「全然忙しくないよ。」
「あっ…で、では、よろしくお願いします!」
「えーー何聞くん?じゃあ、質問その1!!」
「そ、その1!このお店を始めたのは…今年で??」
「今年の11月11日で55年やね。最初はスーパーの一角でやってたんやけど、30年くらい前に、ここに移転して。」
「オープン当時からの常連さん、今でもいたりしますか?」
「おるおる。みんな立派になってるわ。」
「へー!そんなに長い間お付き合いが続く常連さんが…なにか秘訣はあるんですか?」
「全然ない。」
(ミロク、心の声)
ないんかーーーい!!でもなんか、この短時間でのやり取りで、わかった気がする…(笑)
「本音でただ喋るだけ。お世辞は言わんげん。」
「確かに。こんなにざっくばらんに話せるお店ないですもんね(笑)」
「そんなこと無いわいね。みんな本音で喋っとるやろ。そんなヨイショしたって意味ないし。」
「このざっくばらん感が心地いいんです。変に気を使われてないというか、なんか…」
「気使う必要ないもんね!?」
いや、ちょっとは…使ってほし…
「お金使って欲しいけど!!(笑)」
お店の常連さんは、ほとんどが学生時代に通っていた方たち。そして現在も美大生や医大生が多い。開店当時から座席数は20人も座れないこじんまりとしたお店だったそう。メニューを見ると「超特大」の文字が。それなのにめちゃくちゃ安い・・・。学生さんはお好み焼と焼きそばを1つずつ頼んでシェアをしていたらしいが、一人のお客さんだとそれが出来ない。そこで「満腹セット」という半々セットが設定されているのだ。優しすぎるー!!しかもこれも安い!!
「メニューも多いですよね。」
「わからない・・・?」
「注文も(お客さんに)書いてもらうんだけど、もう、自分の頭で覚えられないから、値段自分で計算して、自己申告で!!って。」
「すごい・・・お客さんへの信頼がぶ厚い…持ちつ持たれつですね(笑)」
「ここ最近、80近くなると全く覚えられない!」
「え!!?…今、おいくつなんですか?」
「昭和20年生まれやから…1945年。…計算できんでしょ?」
「私もできない。」
「やっぱりー(笑)」
「一緒やったー 。」( ←友達か!!)
「77や。」
「お父さんと同い年?」
「そうや。」
「じゃあ、馴れ初めから聞いていきますか。」
「馴れ初めんなんてないわ!!」
「(笑)触りだけ。」
「ナンパされたんや。」
「やっぱり!」
「嘘や!なんや、やっぱりって!!(笑)」
弘美さんは大学時代、京都の美容学校に通っていた。学校の行き帰りで、不審な男性がウロついていた為怖くなり、通りがかった人に助けを求め、車に乗せてもらったのだ。それがなんと、今の夫・正三さんだった。
・・・出会いがロマンチックすぎる・・・
正三さんは京都の方。しかし、金沢に母親を残していた弘美さんは、家族の事もあり地元に帰りたいと相談すると、正三さんは一緒に帰ろうと快諾してくれた。
「素敵ですね。なぜ、数ある食べ物の中で、お好み焼き屋さんだったんですか?」
「スーパーの横にお好み焼き屋さんが金沢には一軒もなかってん。大学生時代の京都には当たり前やったんに。どっこにもないから、じゃあ、私がやろうって。」
そこで色んなスーパーに電話をかけた。だが、そう簡単ではなく、断られ続けていたと言う。そんな中、近くのスーパー「マルサン」だけはクリーニング屋さんの跡地があるからそこでよければと承諾してくれたのだ。正三さんは橋場町にある洋食屋さんで働いていたため、最初は弘美さんだけで切り盛りしていた。
「お店を始めようと思った時に、お好み焼きを作った経験は…?」
「無かった。当時、柿木畠にあったお店行って、ソースの作り方を見て、メモして。」
「見て?教えてもらったんじゃなくて!?」
「うん(笑)で、オープンの日、すんごい列になって、びっくりして。こんなにたくさんお客さん!?って。そーっと見にきた兄嫁とかが、こりゃ大変や!って言ってみんなで手伝いに来てくれて。キャベツ切ったりタコ切ったり。」
「すごい!京都時代の印象で、出してみたら、大当たりだった?」
「大当たりなんかね。近所のおばちゃんたちが「これ何!?」って興味津々で(笑)」
「たこ焼きの存在すら。」
「知らない。お好み焼きも。へー、こんなんって言うて外から覗いて。」
「お好み焼きやたこ焼きっていい匂いしますもんね〜。」
「そう。で、スーパー入っていく人が、注文してくれて。まぁ、ラッキーやったんかも。」
開店初日からお客さんの列は途絶えることがなく、当時お好み焼きが50円という値段にも関わらず現在の売り上げよりも多かったそう。一人では手に負えなくなり、正三さんにも石橋屋に来てもらう事となった。
「本当は、ご飯もんもやりたいから、洋食屋さん行って欲しいってことで行ってもらってたんやけど、でも、ご飯もんはできんかったね。お店が狭すぎて。」
「でもご飯もんしたやん。」
「医大の野球部が、晩飯食わしてって。それがコロナで全部ダメになって。」
「練習後にうちで食べてたから。今、練習してないからね、コロナで3年間。だから今は夜してない。」
「昔は夜もしていたんですか?」
「野球部のためだけにやっとった(笑)だって30人もいるからほかのお客さん入れないもん。」
「学食じゃないですか!」
「ガーって座って、この机全部くっつけて、補助椅子使って。食べたもんは立っとれー!って言ってたけどね(笑)」
「コロナの期間でかなり減ったんですね。」
「減った減った。ここのところはちょっと戻って来たけど。授業無かったしね。」
「今でも野球部の子らはくるよ。」
「でも昔ほどではない…やっぱり昔みたいに来てほしいですよね。」
「そうやねー。でも、もう年やから!いつ辞めてもいいかなって。」
55年続けていると昔からの常連さんもいい年齢となってきた。孫がいる人や、中学時代に通っていたという50代の男性も懐かしいと言って顔を出すことがある。これから親子3代というケースも出て来そうだ。
「お客さんとの心温まるエピソードみたいなのあったりしますか?」
「うーん。みんな心温まるお客さんばかりだから…。あ、でもうちの自家製のマヨネーズが食べたくて、とか、瓶に詰めて持って帰りたいとか(笑)お好み焼き冷凍で送ってくれって言われたこともあったわ。」
「創業の当時と味は?」
「変わってない。ずっと一緒。」
「守られてますね、味。最初っから見よう見まねで作って、美味しい!ってなったんですか?」
「なった。」
「天才やん!!」
「やっぱり?(笑)」
22歳という若さ、しかも1歳の子がいる中でひとりお店をオープンさせた弘美さん。朝7時から夜の9時まで働き詰めだった。ご近所さんにもお世話になりながら子育てをし夜に帰って寝ようとすると、学生が家に訪ねてくる日もあった。そんな時はお風呂とご飯を提供する。本当に実家のような感覚だ。
「もう辞めたいなーって思うんやけど・・・。」
「なぜ辞めたいという気持ちになってるんですか?」
「うーん…コロナからかな。そろそろ辞めたいなって。でも息子たちは「今日、お客さん1 人やったね」ってなっても、お店しとれって言う。ボケるしって(笑)」
「お子さんたちに継いで欲しいとか言うのはないんですか?」
「いや!」
「なんでですか?」
「苦労させるのは嫌。」
「食べ物屋なんて全然儲からんよ、今。よっぽどじゃないと。」
「息子は、本当はしたいって今でも言うとる。でもダメ。」
「絶対にさせない。今、公認会計士やっとるけど、そっちの方がよっぽどいい。」
「辞めたいと言いながらも、本心では辞めたくないんでは?」
「なん、ボケるしや!」
「(そろそろお腹が空いてきた…)お母さん。このお店の1番人気のメニューは?」
「日替わりと、満腹セットかな。」
「メニューは当時と比べて増えてますか?」
「だんだん増えた。学生が、あれしてこれしてって言って。」
「そば飯は、兵庫県から来てた薬学部の子が『そば飯って知ってる?』って。知らんって言ったら、僕が教えるから作ってほしいと。」
「そんで1ヶ月毎日そば飯食べてた。びっくりしたわ。」
「そんなに!?うわー、ソバ飯にも惹かれますが・・・今日はオムソバと、日替わりと、お好み焼きの豚玉を下さい!!」
サッと厨房へ足を運ぶ弘美さん。あっと言う間に鉄板へ焼きそばが投入される。テキパキと作業を進める姿・・・やはり慣れた手つきです。・・・ん?動きが止まった・・・??
「あれ?何つくるんやった?」
「ちょっとー!(笑)オムソバと、豚玉と、日替わりも下さい!」
「そうやったそうやった!!(笑)」
ジャジャーーン!!
まず出てきたのは、オムソバ。
「出来たて!!美味しそう・・・すみません、早速いただきます!!」
焼きそばを中から取り出すと熱々の湯気が・・・最高ですな・・・
「ん?ソース、結構あっさりですね~。量はあるけど、スッキリ食べられます!」
「はい、次どうぞ。」
「わーい!!お好み焼き!!朝ごはん抜いてきて正解でした(笑)マヨネーズが、これでもかってくらい掛かってる(笑)いっただきまーす、2品目!!」
あ、自家製マヨネーズに卵のカケラが入ってる。
「カケラって(笑)ゆで卵ね。あと玉ねぎもみじん切りで入っとるよ。」
「はー、タルタルですね~。自家製…ここでしか食べられない味だ!!お好み焼きソース、焼きそばのと全然味が違いますね!酸味が効いてる。お好み焼きも、しっかりした生地で、これだけでもお腹が満腹になりそう・・・。」
「あと日替わりやったね。」
・・・と、肉うどんを作る弘美さんに絶メシ調査隊スタッフが待ったを入れた!!
「お母さん、今日の日替わり「肉豆腐」って書いてあるよ・・・。」
「うそ!?」
ってことで、急きょ、この日の肉豆腐は肉うどんとなりました(笑)いやーー、この肉うどんも最高だった!!最後に可愛いところが出ちゃった弘美さんです(笑)
満腹で大満足っ!!
終始、楽しそうに話す弘美さん。毒舌一本かと思いきや、お話をしている時のイキイキとした笑顔がとても印象的でした。お店には絵が飾られており、美大生が描いたものだそう。ひとつひとつのエピソードが全て心温まる思い出で出来ていて、お二人の人柄がにじみ出ていた。時代が変わっても、常に学生に愛され続けている「石橋屋」。ご夫婦にとっても、お客さんたちにとっても、思い出深いこのお店を「辞める」と言いながらもきっと大切に続けてくれると思います。
本当に楽しい時間と美味しい料理をありがとうございました!!
No.30
石橋屋(いしばしや)
076-264-2374
8:00~14:00
毎週日曜日
金沢市石引1丁目14-17 メゾンド・リベルテ
金沢駅から車で13分
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