失敗と苦労を重ね、
作り上げられた味が、
地域に愛され続ける。
失敗と苦労を重ね、
作り上げられた味が、
地域に愛され続ける。
多くの会社が立ち並ぶ金沢市畝田中の一角に黄色い外観が印象的な『かわさき』がポツンと佇む。自家製マヨネーズで食べるお好み焼きがウリのこの店、昼時は腹を空かせた会社員が集まり、夜には夕飯代わりの持ち帰り注文が殺到するらしい。ソースとマヨネーズの香りに誘われ、絶メシ調査隊寺田が店に向かった。
「どうも! 絶メシ調査員の寺田です。暑い夏、汗を流しながら食べるお好み焼きもまた乙! また、自家製のマヨネーズ使用って…。惹かれますね。どんなものが出てくるのか楽しみです!(あぁ後はビールがあれば最高なんだが…)」
店主の河崎弘(かわさきひろし)さんとヤス子さん夫妻が出迎えてくれました。
「店は今年で32年目、私も76歳になりました」
「お母さん一人で!? ご主人は会社から帰ってきて夜に厨房に入ってたんですか」
「宣伝とかはしていなかったし、私も昼間は一人でも大丈夫かなって。徐々に口コミでお店のことが広まってね。少しずつ来てくれるご近所さんが増えていってくれたの」
「へぇ~。今じゃ近くの会社の方なんかも来られているって聞いたんですが」
「なるべくお客さんの負担にならないように、考慮してるってことですね」
「すごいですね。出前までやってたなんて(よくまぁお客さんもOKしたなぁ~)」
「時間かかるし焼き始めていい?」
「あ! すみません。よろしくお願いします」
調理は分担制。ヤス子さんが慣れた手つきでお好み焼きの具材を混ぜ合わせ、ご主人がそれを焼く。火加減に気を配りながらふっくらと焼き上げるのがこだわりとのこと。なるべくボリュームをつけたいと、キャベツをたっぷり使い、厚みを出すのがかわさき流。そのため、焼きに時間がかかるのだとか。調理過程を見ているだけで、テンションも上がってきます!
「初めはね、近所の学生さんのために店を出したのよ。安くてお腹いっぱいになってもらいたくて。今じゃ会社勤めの人が多いんだけど(笑)」
「でも、その人たちが家族で来てくれるようになって、その子供がまた大きくなってから来るんよ。それも長年やってきた醍醐味だね」
「それは、嬉しいことですよね」
「この人、お客さんの顔をよく覚えてるからねぇ~。私は、あんまり人としゃべるのが得意じゃないからすごいわ」
そうは言うものの、笑顔でいろいろ話してくれるヤス子さん。
「うちは2種類のソースを使ってるんだけど、そのソースで味付けた焼きそばもおすすめなんです。作りましょうか?」
「お願い致します!(それを聞いたらオーダーせずにはいられんでしょ!)」
どれどれ
最初は失敗続きだったという、自家製マヨネーズ作り。調理工程は一人ではできず、ご夫婦で協力して作っているのだとか。混ぜ合わせる力加減や食材を入れる順序やバランス、一つ間違えれば、うまく固まらなかったり、味が定まらなかったり。そのため、「いつも神経を使って作ってます」とお二人。
2種類の特製ソースで味付けされ、自家製マヨネーズがのった「ブタ玉」550円。地物の野菜をふんだんに使い、厚みを出しています。
「ボリューミー! 香りも良いですね。では、いただきます!」
大きな一切れにかぶりつきます。
コク深いソースと甘味のあるソースがまず野菜の甘味を立てる。後からマヨの濃厚な味わいが広がります。
「うまい! 中はふわっと。2種類のソースがそれぞれしっかり効いてますね。自家製マヨネーズはこれ…からし? も入ってるんですかね。鼻に微かに抜ける辛味も絶妙ですね」
「気づかれました? 隠し味として少量しか入れてないのに。お子さん連れてくる人も多いし、辛いのが苦手な人がいるかもって考えて、マヨネーズは上にのせてるんですよ。ソースの味もあるからほとんど気づかれないんですけね」
「絶妙ですね。それにしても一枚が大きいですね。そしてメニューにある「お好み焼き定食」はこれにご飯も付いてくるってことですよね…。すごいボリューム」
「お好み焼き定食は、関西からおいでたお客さんに向こうにはこんなのもあるよって教えてもらったの。オープン時からお好み焼きとご飯頼まれる人も多かったし、味噌汁も付けて定食にしちゃおうって。お客さんの中には、お好み焼きの大盛りやご飯の大盛り、おかわりを食べられる人もおいでるからね~」
これまた野菜や肉も多く、満足度も高そう。
「あ!ソースのバランスが絶妙ですね。コクのある方が甘めのソースより若干多い感じ。でも野菜の旨味は消さないほどよい味わい。麺ももちもちですね」
今ではこの地を離れた人も時折、店を訪ねてくれるのだとか。
「記憶の中で忘れられない味。そんでお父さんお母さんがいるお店が恋しくなるんでしょうね。お父さん、お母さんもそういうお客さんがいらっしゃるから、がんばってるんですね」
「そやな。仕事の時間も長いし、店終わってから掃除。オープンキッチンにしたのは、お客さんから見られるところと思えば、手を掛けない訳にはいけないからね。店も常に綺麗にしておきたいし。で、店の事が終わったらやっと自分たちのご飯ですよ、忙しい日は12時を回ることもあったし。次の日もまた5時、6時に起きて仕込みしなきゃならんからね」
「お子さんは店を継がれる予定なんですか?」
「いや継がんな、店始めるのも賛成はしてなかったし。継いでくれたら嬉しいんだけどね」
「定年になってね。なんもすることなくなるのが嫌でね。新築立てるタイミングではじめた店だからね、妻にも感謝してますよ」
長年親しまれた味と共に、ご夫婦の和やかな雰囲気が、訪れる人の心を掴むのだろう。時間のない昼時、お腹を満たすだけでなく、少しばかりゆったりとしたひと時を求め、今なお多くの人が足を運ぶ一軒である。近くにお越しの際には、特製ソースの香りに誘われ是非とも自家製マヨネーズが自慢のお好み焼きを味わってほしい。
最後の写真にポーズをとってほしいとお願いすると互いに握手を交わした二人。これまでありがとう、そしてこれからもよろしく。そんな気持ちを込められているのだろう。
No.09
かわさき
076-268-4295
11:00~14:00 17:00~21:00
なし
石川県金沢市畝田中4-1-26
三ツ屋駅から3,580m
絶メシ店をご利用の皆さまへ
絶メシ店によっては、日によって営業時間が前後したり、定休日以外もお休みしたりすることもございます。
そんな時でも温かく見守っていただき、また別の機会に足をお運びいただけますと幸いです。